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ペットロボット-トリの場合


「けっ、なにがペットロボットだ。そこまでして、ペットが欲しいか? どうせ、プログラミングされてることしかできないようなシロモノに、 音声認識や画像認識をくっつけて、それっぽくしてるだけじゃねぇか。 そんなもんに高い金出しやがって、ばっかじゃねぇの?」
トリは、休日、テレビでペットロボット特集を見て、文句をたれていた。

「ぷっはー、うめぇ。よく冷えたビールはやっぱうめぇなぁ。」
つまみにせんべいをほおばりながら、ビールを飲む、トリにとって、最高の癒しの時間だった。

それから数日後、会社の同期と飲みにいった。
「悪いんけど、おれ、来週から2週間海外出張なんだ。それで、うちのペットを預かってほしいんけど・・・。人なつっこくって可愛いんだ、うちのワンちゃん。」
トリは同期にいきなり頼まれた。
「けっ、ペットショップにでも預けろよ。そもそも、おまえ、一人暮しのくせに、よくペットなんか飼ってるよなぁ。 残業ばっかりしてるくせに、ペットは餌ももらえず、散歩にもいけずに運動不足で悲惨な環境だよな。」
トリは悪態をついた。
「おまえ、あいかわらず口悪いなぁ。ちゃんとペットの世話をするペット用ロボットがいるんだ。すごいだろ。 ロボットの内部に餌をいれておいて、餌の時間をセットすると、その時間になると、ペットに餌をやってくれるんだ。 散歩だって、あらかじめ散歩コースと時間を設定しておけば、ちゃんと連れてってくれるんだ。」
「けっ、でも、フンはその辺にされるんだろ?家のいろんなところに小便かけられてシツケもめちゃくちゃなんだろ?」
「いや、あらかじめペットをロボットに認識させておくと、ちゃんとペットの動きも察知して、シツケもしてくれるんだ。散歩中のフンの始末もしてくれて、すごい大助かりなんだよ。 そもそも、おまえみたいなやつに世話を頼むぐらいだから、よくできたロボットなんだよ。」
「けっ!余計なお世話だ!だったらおれに頼まず、ロボットと一緒に留守番させときな。」
トリはふくれた。
「うん、そうなんだけど、やっぱり心配でさ。おまえみたいなやつでもいてくれたほうがマシかと思ってさ。 な、お土産にうまい酒を買ってきてやるからさ。」
トリはちょっとむかついたが、でも、そのペットロボットに興味があったので引き受けた。

後日、ペットとペットロボットがトリの家にやってきた。
わんわんわん!ペットは性格の悪いトリなのに、尻尾を振って近寄ってくる。
「おまえには、本当に良い人と悪い人の区別がついてるってことかね?」
トリは無償にペットが可愛く思えて、思わずだきあげた。 と、そのとき・・・。
「うわ!」
トリは、手になまあたたかい液体を感じた。
「うわ!おしっこしたぁ!」
すると、さっきからペットを認識しているのか、小さく動いていたペットロボットが、たたたっとちかづいてきて、ペットを叱り、ここでおしっこしちゃだめ!と教えはじめた。
トリは呆気にとられて、その様子をみていた。
「ふぅん、思ったよりよくできてるなぁ。」
トリは、同期の友達にいわれたように、ペットロボットに餌や散歩コースをセットした。
時間になると、ちゃんと餌をあげたり、散歩につれていく様子をトリは遠く離れたところから見守った。
「へぇ、よくできてるなぁ。ペットの行動を画像認識して判断してるんだろうけど、なかなかうまくできてる。」
トリはロボットを観察しているうちに、むちゃくちゃ興味を持った。 ペットロボットに近づきいろいろボタンをいじってみた。

「えっと、これは餌用のボタンで、こっちが散歩用ボタンだっけ。あれ?このボタンはなんだっけ?」
トリはロボットの額にある小さなボタンに気づいた。
「んん?なんだろう?簡単に壊れるほど、最近の技術はヤワじゃないし・・・。押しちゃえ!」
トリは、ロボットの真正面に顔を近づけ、額のボタンを押した。

ジジジジジ・・・・・。

「???なんだろう?なんか認識してるなぁ。あ、終わった、終わった。」
ふとみたら、ペットがソファーの上におしっこをしていた。
「うわぁ!おまえ、そんなところにするなよ!おい、ロボット、しつけてこい!」
ロボットを見ると、ロボットはトリの方を向いたまま、動かなかった。
「あれ、もしかしてさっきのボタンで壊れちゃったのかなぁ・・・。いいや、あいつにはロボットが勝手に壁にぶつかって、ボタンが押されたとか、適当にごまかそっと、、、」
トリは、ちょっぴり罪悪感をかんじながらも、罪逃れをしていた。

「昨日食い過ぎたせいか、腹の調子が悪いな。トイレにいこっと。」
飲みかけのビールをテーブルの上において、トイレにいこうとすると・・・・。
ギーギーギー。 トリの動きに合わせて、ロボットがトリの後をついてくる。
「あれ?なんでついてくるんだ?」
トリはトイレのドアを閉めようと思っても、ロボットが閉めさせてくれない。
「なんだよ!トイレについてくんなよ!変態ロボットめ!」
トリはなんとかしてドアをしめ、用を済まして出てくると、ロボットがトリをここはトイレじゃないと叱り始めた。
「な、なんだよ!なんで俺をしつけるんだよ!」
トリはなにがなんだかわからなかった。

ぴこーんぴこーん!
トリがさっき設定したペットの散歩時間になった。
トリは、まさか・・・とあせったのもつかの間、ペットロボットに首輪をつけられ、散歩に つれていかれた。
「やめろよ!おれはペットじゃないって!」
何をいおうとわめこうと、ペットロボットは決まったコースでトリを散歩させた。

家にたどりつくと、同期から国際電話があった。
「もしもし、あ、元気でやってる?おれ、犬バカだから、心配になってさ。うちのワンちゃん、元気?」
「なにがワンちゃんだ!おまえの変なロボットが、おれの後をつけまわしてうっとおしくてたまらん! とっととこの不良品ロボットを修理に出してやる!」
「え???おまえ、まさか、自分を画像認識したんじゃ・・・。」
「・・・は?」
「額にあるボタンを押すと、ペットを画像認識するんだ。おまえ、それで、自分を認識させただろ?」
「・・・あっ・・・・。」
トリは思い当たるふしがありすぎて、それ以上声がでなかった。
トリは急いで、ペットを抱きかかえて、トリの後をつけるロボットの目の前にかかげ、額のボタンを押した。 すると、ロボットは、トリの後をつけるのをやめ、ペットの後をちゃんとつけるようになった。
「ロボットを預けるんだったら、取り扱い説明書も一緒に貸せよな。けっ!」
トリは文句をいいながらも、ほっとした。


・・・ちゃんと取り扱い説明書を読んでお使いください。